片思いがテーマの3編を収録。
【気にしないでくれ】
中学三年になって、僕は新鮮な気持ちで君を見つける。一昨年と同じ、ただのクラスメイト。友達というほどの親しさでもない。けれど君はきれいだった。僕は君を眺める。
【暗澹たるどんぶらこ】
故郷の星を飛び出した桃太郎は、仲間を集めて鬼退治に向かう。集まった四人ははみ出し者で、この世の鬼と戦っていく。また叶わない恋に、はじめて得る友情。桃太郎は不条理にぶつかりながらも、必死で前へ進もうとする。勧善懲悪のおとぎ話をベースに、異文化の衝突と人間の善悪を描く一遍。
【アテネの風】
三年つきあった恋人と別れた侑斗(31)は、二人で来るはずだったギリシャに一人だけで訪れた。夏の日射しやギリシャの歴史を感じながらも、なぜか心は二人で過ごした日本を彷徨う。アテネの風が侑斗を揺さぶる。飲めない酒を、買いに行く。
・気づいたときには「気にしないでくれ」が書きあがっていたので、「これどうしようかな?」を考えて「短編集やりたいな」となったのでした。
・桃太郎を題材にした話はいつか書きたいとは思っていて、かつ、「仲間あつめて旅するなんて、青春漫画じゃん萌えるじゃん」という取っ掛かりです。
・最初はポップな話にしようとしてました。それとは別に「重い内容は軽めポップな雰囲気で」というのが信条としてあったので、それが逆転してこんなに暗い話になったんだと思います(おぼろげ)。
・戦争、薬物、立場の不自由、教育の呪縛、噂の怖さ、文化の衝突、友情の儚さと強さ、それでも報われない恋の環境…等々、詰め込みすぎ感もありましょうが、元が勧善懲悪で、「善悪」に焦点をあてるとこういうものになるのは自然な流れだったな、と思います。
・テーマもテーマなんですが、昔話風の文体はなかなか厳しかったですね。体の中に存在しないリズムで無理くり書いてる感じがありました。成長した^^
・タイトル通り、暗いお話ですが、最後の二文はなかなか救いだと思っています。犬太のその発想があれば、これはハッピーエンドになる。
・「アテネの風」は、「暗澹たるどんぶらこ」から酒と煙草を排除したので、その二つを出そうと思って書いたお話でした。うじうじ元彼考えてるだけの話ですが、舞台をアテネにするだけで、ギロスだとかウゾとかエフハリストみたいな、外国感の強い単語が出てきてぐっと締まるので正解だった。
・逆おとぎ話というか、現実感を出したいな、と、気を遣ってみた作品です。固有名詞とか話し言葉のおかげで、わりとありがちな生々しさが出たんじゃないか、と満足です。
・濡れ場がない一冊にできたので、Kindleカテゴリを「ボーイズラブ」じゃなくしてみました。次は濡れ場ばっかりの短編集とかやりたい^^
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